東慶寺花だより

井上ひさしさんの小説。原田眞人さんの監督、脚本の映画「駆込み女と駆出し男」の原案小説です。

装丁が素敵なので単行本を購入。

江戸末期の縁切寺、鎌倉東慶寺を舞台にした物語。花だよりとは、各章を花に準えて駆け込み女たちの話が綴られているからのようです。
春になると鎌倉山は、涼しげなオオシマザクラの新緑に包まれます。梅雨には紫陽花、秋になると欅がとても美しく色づき、草木が季節の移ろいを告げる街です。
ですから、井上ひさしさんが花の例えを用いた理由がわかるような気がします。

悲喜交交の物語。
ジェンダーの視点から言えば、女性が直面していた、しがらみ、性差別や不平等による「痛み」がテーマになるのでしょうか。
ですが私には、当時を必死に生きる人々の生活や、封建社会の理不尽さ、建前や面子を重んじるあまり本音を語れない男性たちの悲哀が印象的でした。そして、そんな時代でも愛を求める心の普遍性。
でもやっぱり、この時代を女性として生きるのは辛いなあ…

それでも、風情や情緒、自然、文化など、多くを失いつつある現代人にとっては、江戸という時間はどこか魅力的に映ります。
時を経て、様子は変わっても、波の音や木々の囁きはきっと変わっていないのです。
何より、鎌倉は、私にとって青春時代を過ごした思い出の街ですから。
いつでも、少しだけ足を止めて耳を澄ましてみよう。
自由に生きること、自分らしく生きることを求めて東慶寺を目指した下駄の音に。

映画『駆込み女と駆け出し男』スペシャルディレクターズカット予告
ファイル・ロケーション: 映画

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