サヨナライツカ

初めてバンコクを訪れた人は、その活気にきっと驚くはずです。
高度成長期前の怒涛の日本にITモバイル機器とソーシャルネットワークを持ってタイムスリップしてきたような街、それがバンコクです。
まとわりつくような湿気、そこここにある屋台からの甘辛いエスニックな匂いと混ざり合う街の汚臭、溢れかえる自動車とバイクの排気ガス、喧騒、容赦ない太陽光と蒸せ返るような熱気、軟弱な日本人の私を辟易とさせます。
いっぽうで、暮らしは厳しいけれどのんびりと穏やかで、敬虔で人懐っこく微笑ましい、どこかなつかしく、それでいてエキゾチックな街、それもバンコクです。
仕事で訪れる機会が多くなってから、私にとっては、そんな玉石混交の思い入れある街になっています。

この映画の舞台は70年代半ばのそんなバンコクから始まります。
赴任してきた若きエリートビジネスマン–豊(ゆたか)が、バンコク最上級のオリエンタルホテルのスイートルームに暮らす艶やかな美貌の日本人女性–沓子(とうこ)と恋に落ちます。その恋はやがて確かな愛情となり、25年の時を越え、結ばれます。

撮影の多くは、街中、寺院、チャオプラヤ川、そしてオリエンタルホテルのスイートルームなどのロケで行われますが、今のバンコクを70年代半ばとして撮影されることに違和感を感じさせるようなものはほとんど無く、言い換えると、そのことが、きっとバンコクの魅力なのです。
つまり、25年の間、二人の愛情が包容されるための器として、この物語にはバンコクという街が必要だったように思えます。
きっと、二人を身を焦がすような恋へ駆り立てたのも、あの激しいスコールや肌を焦がすような日差しのせいなのかもしれません。

映像の美しさとすばらしい音楽は、特筆すべきものです。

ファイル・ロケーション: 映画

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